地下鉄での出来事。
私はというと、
デッカいリュックをしょって
手には、生け花の花材を
入れた長い花袋と
ずっしり重い紙袋を持って、
お気に入りのポッドキャストを
聞きながら
イアホンを両耳に入れて
優先席の前に立っていた。
その時にもよるが、
リュックを下ろして
荷物を抱えて座っても
降りる時にまた背負って
荷物を持ち替えて、
人をかき分けてというのが、
かえって面倒なので
立っていることが多い。
今日も、邪魔にならないように、
連結近くの優先席に
座っているご老人の前に
立っていた。
ある駅で、目の前のご老人が降車し、
別の男性のご老人が
私の目の前の席に座られた。
ふと見下ろすと、
そのご老人が私に向って
なにやら話しかけている。
慌ててイヤホンを外し、
聞き返すと、
意外な言葉が返ってきた。
「荷物お持ちしましょうか?」
「いえいえ大丈夫です…。」と
慌てて答える私。
荷物を抱えて立っている人の
前の席に座ったことを
申し訳なく思われたのかもしれないが、
複数の人間を恐喝し、
コンクリート詰めして殺すような
信じられない悪魔がいるこの国に、
こんなにも心やさしい人がいるのかと、
つり革を持ちながら
ウルウルしそうになっていた。
私が先に降りそうだったので、
「ありがとうございました」と声をかけ、
目があったので、軽く会釈して降車した。
駅の階段を登りながら、
女性ならまだしも、
オッサンに男性のご老人が、
情けをかけるのは、よっぽどのことで、
よっぽど、疲れ切ったヒドイ顔をして
立っていたのかもしれんと思うと、
複雑な気持ちになってきた。
いやいや、
とんでもなく心優しい人に
出会ったことには違いないのだから、
素直にちょっといい話...
ということにしておこう。
0 件のコメント:
コメントを投稿